気まぐれなあとがき

すべてあなたとわたし宛て

生き返る

本名でInstagramを始めた。何年も前に元同級生のアカウントを見つけてから、わたしもやってみようかなとずっと悩んでいた。悩む理由はいくつかあったけれど、そのひとつにわたしが生き返ってしまうというものがあった。

わたしは小学校も中学校も高校も不登校で、同級生との思い出がほとんどない。携帯も買い替えたので誰ひとり連絡先も知らない。成人式も散々迷った挙句行かなかった。というわけで、大袈裟な表現をしてしまえば、同級生の間で時田死亡説が流れてもおかしくないのである。死んだ(と思われたかもしれない)人間が生き返っていいのだろうか。この過剰な自意識が決断を邪魔して数年間問題を放置していた。

じゃあなんで今になって突然始めたのかというと、寂しかったから、としか言いようがない。学校に恨みはあるが同級生のことは(ほんの一部を除いて)嫌いじゃなかったことに今さら気づいてしまった。あと、不登校とはいえたまに教室に行っていたので、わたしの存在自体は忘れられていないだろうというこれまた過剰な自意識があった。

アカウントを開設して、中学の同級生を中心にフォローしていった。

一番連絡を取りたかった人のことはあえて自分からフォローしなかった。絶対に見つけてくるだろうと思っていたからだ。そうしたら数日後ほんとうにその通りになって自分でも笑ってしまった。DMのやりとりが昔のそれと全然変わっていなくて、もう一度笑ってしまった。

やりとりが終わったと思ったら、彼から今度はこんなDMが来た。

 

「小説家になるんですか?」

 

心臓をぐしゃっと掴まれたような気がした。

なんで!?と思ったら理由は簡単で、アカウントのウェブサイト記載欄にこのブログのリンクを貼り付けていたからだった。彼はブログを読んでくれただけだった。

「小説家になりたいんですか?」じゃなかったところがまた彼らしいと思う。わたしは逃げられないと思ったので否定しなかった。その後のやりとりで「〇〇賞に応募しとけ」と言われた。なぜそんなマニアックな新人賞を知っているのかは尋ねなかった。

 

最近小説を書きたいのかどうかよくわからなくなっている。原稿のことを考えると精神的に体調が悪くなるし、パソコンの前に座っていても何も出てこないし、わたしはほんとうにこんな苦しみを伴う作業をしたいのだろうか?と疑問に思う。

小説を書きたいと小説家になりたいは別物で、わたしは前者でありたいと思っていたのだけど、ほんとうは後者だったのかもしれない。肩書きがほしいだけだったのかもしれない。小説の神様がいるとしたら、きっとわたしには微笑んでくれないだろう。

それでも書いてしまう人だけが小説家になれるのだ。

近況

ブログをだいぶ放置してしまった。ずっと前からTwitterでネタがないと騒いでいたけれど、ここまで何も出てこないとは思わなかった。今日の記事はリハビリみたいなものです。残念ながらおもしろい話は何一つできません。

この数ヶ月何をしていたのか、あまり言えることがない。本を読んでも特に感想が湧いてこなかったし、小説を書こうとパソコンの前に座っても白い画面を数時間見つめて終わる日々が続いていた。
どんな文章でも執筆はトライアンドエラーの連続で、駄作でもいいからとりあえず何か書いて後から修正すればいい。以前はそんな感じでハードルを下げると書けるようになっていたから、今回も同じスタイルでいこうと思っていたのだけれど、効かなかった。

こういう状態のことを、俗にスランプと呼ぶのでしょう。

なぜブログを書く気が起こらないのか、自分の中で分析してみた。時間をかけて考えて、主な原因は下のふたつだろうと思った。

①このブログにはおもしろいことを書かなくてはいけないと思いこんでいたこと。
②そのおもしろいことを見つけられるような余裕が最近の生活にはなかったこと。

要するに、ここ数ヶ月自分を追いこみすぎて、脳内に余計なことを考えられるような余白がなかったわけだ。よく考えれば、昔からわたしは追いこまれると思考停止してしまうところがあった。性質は全然変わっていなかったのだ。

ブログも小説も、あまり追いこまずに書き続けていきたいと思う。
まずは月に1,2回の更新を目指します。

ぺんぎんと日記

最近Twitterのフォロワーさんの間で日記を書くのが流行っているらしい。ここ数日、タイムラインに流れてくる日記をすべて読んでいる。他人様の日記を読むのは楽しくて面白くて時間がどんどん溶けてしまう。誰かに向けられた言葉ではなく、個人的な出来事をつらつらと書き留める姿を想像したら、とても尊いもののように感じた。日記を書いているときの人間は、日々の生活の中では見られないような、美しく真剣な目をしているんだろうと思う。そしてその姿は誰にも見せない自分だけの姿だから、尊いものに感じるんだろうと思う。公開しなくてもいいからみんな日記を書けばいい。

布団の中でフォロワーさんの日記を読んでいたら、ぺんぎんがトコトコ近づいてきて何をしているのか尋ねてきた。ぺんぎんにはTwitterがわからないだろうから、フォロワーさんという言葉は使わず、友だちの日記を読んでいるんだよと言った。それを聞いたぺんぎんは僕も書きたいと目を輝かせた。ぺんぎんの毎日はほぼ同じことを繰り返しているようにしか見えないが、どんな日記を書くのだろうか。わたしは紙と鉛筆をぺんぎんに与えてみることにした。

1月〇日

僕の朝はとても早いです。午前4時くらいに起きます。すみれちゃんを起こさないようにベッドから出て、お風呂掃除をします。お風呂掃除をすると100円もらえます。今日も朝からお風呂を掃除して、すみれちゃんのママから100円をもらいました。

掃除が終わると二度寝の時間になります。すみれちゃんを起こさないようにベッドの中に入って、起きるまで一緒に寝ます。すみれちゃんは寝相が悪いので、ベッドから落ちないように気をつけます。ふかふかのお布団は最高に気持ちいいです。

8時にすみれちゃんが起きました。しばらく布団の中でゴロゴロした後、えいやっと言いながら起き上がります。僕も一緒に起きて朝ごはんを食べました。今日の朝ごはんは肉まんとミロでした。僕は生魚が食べたいです。でも生魚は高級だからうちでは食べられないらしいです。ミロは大人用なので甘くなくて残念です。

朝ごはんを食べたらお勉強の時間です。すみれちゃんは大学のお勉強をおうちでやります。今日は西洋美術史の講義を見ていました。僕も隣で一緒に見ました。大学の勉強は難しくてよくわからないので、途中でウトウトしてしまいました。しばらくしてハッとして隣を見ると、すみれちゃんも眠そうにしていました。すみれちゃんの頭をペシペシ叩いて起こすのも僕の役割のひとつです。講義が終わるとすみれちゃんは机に突っ伏していました。

すみれちゃんが起きたらお昼ご飯の時間です。今日のお昼はすみれちゃんが作った目玉焼きつきのキムチチャーハンでした。美味しいけれどちょっと辛いです。ぺんぎんは辛いものが苦手です。この前文句を言ったら「これしか作れるものがない」と言われてしまいました。僕もお料理が苦手なので今度ふたりで練習したいです。まずは魚肉ハンバーグでも作ってみたいです。

すみれちゃんの午後のお勉強が始まると同時に、僕はお散歩に行きます。100円玉を握りしめて、近所の駄菓子屋さんに行きます。今日も駄菓子屋のおばあさんがにこにこして出迎えてくれました。「ぺんちゃん今日は何を買いますか?」とおばあさんが聞いてきました。おばあさんは僕のことをぺんちゃんと呼びます。僕は麦チョコが好きなのでいつも麦チョコを買います。今日も麦チョコを買いました。おばあさんは麦チョコを僕の口の中に放り投げるのが好きみたいです。おばあさんは僕と遊んでくれる数少ない大切なお友だちです。今日はチョコを投げてくちばしで取って食べる遊びを1時間くらいやって帰りました。

おうちに帰ると、すみれちゃんがお昼寝していました。すみれちゃんは本当によく寝ます。成長期かもしれません。お布団が落ちていたのでかけ直してあげました。

すみれちゃんが寝ている間に、僕はお仕事をします。すみれちゃんのパパから家計簿作成を請け負っているのです。実はぺんぎんは計算が得意です。僕は文字が下手くそで読めないらしいので、パソコンを使います。コーラを飲みながらキーボードをカタカタしていたらあっという間に終わってしまいました。すべてはExcelが計算してくれるので楽ちんです。なんて簡単なお仕事なんでしょう!僕は検算だけすればいいので本当に楽です。すみれちゃんのパパには後でししゃもをごちそうしてもらいます。

夕方になるとすみれちゃんが起きます。そこから「今日の夕飯は何だろな」音頭が始まります。「今日の夕飯何だろな、何だろなったら何だろな」と言いながら、僕がすみれちゃんのママを囲ってぐるぐる回ります。すみれちゃんは見て見ぬふりをするときもあるし一緒に踊ってくれるときもあります。すみれちゃんのママは最初は無視しますが、僕があまりにもしつこいので最終的に折れて「今日の夕飯はブナピーよ」などと教えてくれます。僕はブナピーが好きなので嬉しいです。すみれちゃんはがっかりしていました。

6時になると夕飯ができます。今日の夕飯は本当にブナピーでした。ブナピーは名前が面白いので好きです。味はよくわかりません。すみれちゃんは顔をしかめながら食べていました。

僕はすみれちゃんの後にお風呂に入ります。お風呂は嫌いなので5分くらいしたら出てきます。お風呂の後はアイスクリームを食べます。今日はいちご味のアイスクリームを食べました。甘酸っぱくてとても美味しかったです。

アイスクリームを食べ終わると眠気がやってきました。時計を見ると9時半、もう寝る時間です。一足先にベッドに入ります。今日も1日楽しかったです。日記ってこんな感じでいいのかな? 僕にはわからないけどよく書いた方だと思います。おやすみなさい、また明日。

 

寝る前にふと机を見ると、ミミズの這ったような文字がずらりと並んだ紙を見つけた。ところどころ手でぎゅっと握った跡が皺になっている。よく見るとそれは今朝わたしがぺんぎんに与えた紙らしかった。おそらくぺんぎんの日記が書いてあるのだろう。さあ、ぺんぎんの寝顔を眺めながら読むことにしようか。それにしても、字が下手だなあ……

みかん・半纏・梅昆布茶

1.みかん

みかんが美味しすぎる。母がそこら辺のスーパーで買ってくる、赤いネットに入ったみかんがめちゃくちゃ美味しい。あまりにもバクバク食べるものだから「1日に3つまでだからね!」と釘を刺されている。その計算だと毎食後にみかんを食べてもいいことになるが、手が黄色くなりそうでちょっとこわいので、朝食後と昼食後に食べている。たまに我慢しきれなくて3時のおやつの時間にも食べる。甘みと酸味のバランスが絶妙で、ひとつほおばると口の中が一気に爽やかになる。この、脳までシャキッとする感じがたまらなくすきだ。やみつきとはこのことだろうか。

みかんといえば白い筋みたいなものをどこまで取って食べるか毎回悩む。全部取るのは面倒だし、かといってそのまま食べるのは何となく気が進まない。白い筋みたいなものを全部綺麗に取って食べている女の子が昔同級生にいたが、わたしはそこまで器用じゃないし根気もないので、中途半端に白い筋を残したまま食べることが多い。白い筋をちまちまと取るとき、必ずその女の子の白い指先を思い出す。

 

2.半纏

冬になると部屋着の上に半纏を羽織る。去年まで使っていたえんじ色の半纏はボロボロになって捨ててしまったので、今年から紺色の生地に所々かすりが入った半纏を着ている。暖かいし動きやすいしわたしからすれば満点なのだが、家に来た祖母にその姿を見せたら「すみれちゃんも若いんだからもっと若者らしい服を着なさいよ」と呆れられてしまった。家なんだからいいじゃないか、バスローブ着るよりマシだろう、と思いながら、わたしはそのお小言を聞き流している。

半纏には左側にポケットがひとつついていて、普段はスマホを入れている。ただ、スマホをポケットに入れながらトイレに行きたくないという個人的事情があり、そのせいでしょっちゅうスマホをなくす。ポケットからスマホがすり抜けて便器に落ちたら困るから、トイレにスマホは持ちこみたくないのだ。トイレ内で激しい動きはしないのだが、しょうもない心配性が発動してしまう。というわけでスマホをその辺に置いてトイレに行き、どこに置いたかわからなくなってスマホを見失う。部屋の中にあることはわかっているからどうせ数分後には見つかるのだけど、この時間無駄だよなあと思っている。

 

3.梅昆布茶

梅昆布茶がすきだと言うと十中八九笑われる。何がそんなにおかしいのかわたしにはわからないが、おそらく年齢の割に渋いものがすきなんだなと思われているのだろう。別にいいじゃないか。わたしは梅昆布茶がすきです。

我が家には梅昆布茶の缶が常備してあって、のんびりしたいときにいつでも飲めるようになっている。濃いオレンジ色の小さな缶をパカッと開けると、梅とだしのいい匂いが鼻をくすぐる。熱いお湯をそそぐだけで、ちょっと散らかっている部屋だって老舗旅館になる。床に寝転がってみるとフローリングが痛くてそんなのは幻想だとたちまち現実に引き戻されるのだけど。

ただこの梅昆布茶、湿気に弱くて少しでも湿るとカチカチに固まってしまう。噂にはきいているけど大丈夫でしょ~と思っていたらわたしの大切な梅昆布茶ちゃんも固まってしまった。可哀想に、すぐに元に戻してあげるからね!と言って、湿気取りのマカロニを缶の中に突っ込んであるのだが、これが全く効果がない。フライパンで炒るという手もあるらしいけれど、もうすぐ飲み終わるし、と思って、飲みたいときに匙でガリガリ削っている。

 

これでこたつがあったらザ・日本の冬!なのだけど、我が家にはこたつがない。残念すぎる。サンタさん、余った予算で歳末セールに行ってこたつ買ってくれませんか?

ぺんぎん

こんにちは。ぼくはすみれちゃんに拾われたぺんぎんです。ぺんぎんというのがぼくの名前です。すみれちゃんがつけてくれました。すみれちゃんがいうには、ぼくはペンギンという動物に似ているらしいです。人間もペンギンに似ていると言っていました。飛べないところが似ているらしいです。ほんとうかな? ぼくは本物のペンギンを見たことがないから、わかりません。

すみれちゃんが大学に行っている間に、いつもすみれちゃんが使っているパソコンを拝借してこの文章を書いています。すみれちゃんは最近ずっと「ブログのネタがない」と言っていて、なんだか苦しそうだったので、代わりにぼくが書いてあげます。ぺんぎんはえらいのできっとすみれちゃんは褒めてくれます。

さて、何を書こうかな。

無難にぼくの歴史でも書こうかな。

ぼくは昔ぺんぎんの国にいました。そこはぺんぎんがたくさん住んでいる島でした。本物のペンギンは南極とか寒い場所にいるそうですが、ぺんぎんの国は海辺にヤシの木が生えてるくらい暖かいところです。小さすぎるのと知名度がないせいで地球儀には載っていません。世界地図にも載っていません。詳細な場所を教えると観光客が殺到して島がえらいことになってしまうので教えてはいけないと王様が言っていました。特別にどの辺にあるのか教えてあげると、ナウル共和国の近くにあります。日本から行くとかなり時間がかかるのでおすすめしません。

ぺんぎんの国にはぺんぎんがいっぱいいます。腐るほどいます。たまにニワトリがいて、このニワトリさんはお祭りのときにみんなで美味しくいただきます。王様が雇った飼育員さんもいて、この人たちがぺんぎんの国のお財布を握っています。ぺんぎんの国では食事が3回とおやつが2回あって、すべて飼育員さんが作ってくれます。飼育員さんは昔イタリアンレストランで働いていたらしいです。でもイタリアンが出てきたことはなくて、普段はなめろうが出てきます。たまにsushiが出てきます。すみれちゃんに聞いたんですけど、sushiは日本の料理だそうですね。なめろうも日本の料理だと言っていました。ぺんぎんの国の王様は日本がすきです。なんでも元ガールフレンドが日本から迷い込んできたぺんぎんだったとか。遠泳にも程があるのでたぶん嘘ですね。

なぜぼくがぺんぎんの国からすみれちゃんのおうちに来たのかというと、簡単に言ってしまえば家出です。ぺんぎんの国は競争社会で、飼育員さんから多くのエサをもらうためにたくさんがんばらなくてはいけません。ぺんぎんの国には食いしん坊で意地悪なぺんぎんがたくさんいて、ぼくのエサはそいつらにぜんぶ奪われてしまいました。もうこんな世の中やってられるか! とぼくはブチ切れて、ぺんぎんの国を脱出することに決めたのです。

ぺんぎんの国を出る前に、ガールフレンドのゆきちゃんにさよならを言いに行きました。ゆきちゃんは真っ白なぺんぎんでとてもかわいいです。ゆきちゃんと離れるのはとてもつらいですが、これ以上ぺんぎんの国にいることはできません。ゆきちゃんはぼくの話を聞いてかなしそうな顔をしましたが、「ゆきちゃんも一緒に行こうよ」と誘ってみたら「むりだね!」と断られてしまいました。これが失恋というやつですね。

どうやってぺんぎんの国を脱出したか、どうやって人間の国にやってきたかは、内緒にしておきます。謎は多い方がおもしろい、というのがすみれちゃんの口癖だからです。

とにかくぼくはすみれちゃんに拾われました。すみれちゃんはいい人なので毎日きちんとエサをくれます。たまに豪華なおやつもくれます。ここは天国みたいにいいところです。みんなもすみれちゃんのおうちに来ればいいと思う。すみれちゃんはきっといいこいいこしてくれますよ。

……あ、すみれちゃんが帰ってきた。

すみれちゃんに代わりにブログ書いてあげたよと報告したら、なぜか怒られてしまいました。なんでだろう。ぺんぎんにはむずかしいことはよくわかりません。でもすみれちゃんはこのまま記事にしてあげると言ってくれました。わーい! これでぼくも文豪の仲間入りだ! と言ったらすみれちゃんがあきれていました。

それじゃあぼくはこのへんで失礼します。今日のおやつはミルクレープらしいです。またね。

執筆日記2

 

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もうすぐ夏休みが終わる。

小説書くとかさんざん言っておいてまったく進んでいないが、まあ予想の範囲内なのであまり気にしていない。最初から上手くいくと思ったら大間違いである。これが昔のわたしだったらとうに発狂していただろうと思うと、自らの成長を認めてあげたくなった。いやマジで。しかし公募新人賞の締切が延びるわけがないため、いろいろ試行錯誤しつつカタカタとキーボードを打つ毎日をすごしている。

現状報告

今書いている小説が偶数章と奇数章で分かれており、偶数章はほぼ書き終わっていることは以前にも書いた。偶数章は97パーセントくらい会話文で成り立っているため、すいすいと書くことができた。現時点で32枚(原稿用紙換算)になった。

問題は奇数章である。

もともとこの小説は今のサークルの人々との会話を記念に残しておこうくらいのモチベーションで書いており、その会話も偶数章でほとんど書き尽くしてしまった。ようするに奇数章向けのネタがない。ここで止まってしまうとスケジュール的にもまずい。かなりまずい。というわけで、毎日ウンウン頭を悩ませながらパソコンに向かっている。

最近試していること

小説は芸術だから計画はいらない、と言う人がいる。プロットなど特に作らずにいきなり本文を書き始め、ちゃんと最後まで書き終わると言う。その人はそれで書けるのだからいいが、わたしだったらおそらく途中で挫折してしまう。しかし、わたしの性格上、綿密なプロットを作成しても、書き始めれば脱線に次ぐ脱線であまり役に立たないだろうというのが今までの経験から言えることである。

そういうわけで、プロットはゆるく作ることにした。

偶数章でもやったことだが、まずは登場人物に言ってほしい台詞を名刺くらいの大きさのカードに簡単に書き出す。数は多ければ多いほどいい。ある程度溜まったら、そのカードを元にもう少し具体的な台詞を考える。これはWordに打ち込んだりノートに書き留めたりする。その後カードに戻り、カードをあちこち入れ替えて書きたいシーンの順番を決める。だいたい決まったら台詞から地の文を考える。どんどん肉付けしてシーンを完成形に近づけていく。シーンとシーンをつなぎ合わせることで小説が完成するというわけだ。

よく考えたら小説の最初から順番に書かなくてもいいのだ。最初から書き始めると行き詰まったときに手が止まってしまい、余計に時間がかかることにようやく気づいた。それだったらバラバラに書いて後から整えた方がいいとわたしは考えたのである。

この小説で目指していること

今書いている小説で目指していることはおもにふたつある。

ひとつは、上に書いたようにサークルの人々との思い出を原稿にちりばめること。

もうひとつは、「知識がなくてもおもしろく、知識があると小ネタがわかってもっと楽しめる」ような小説にすることだ。

わたしが所属するサークル、クイズ研究会の一番の魅力は、自分が持ち合わせている知識でいろいろ遊ぶことができるところだと思っている。わたしはどちらかというと記憶力も瞬発力もないけれど、知らない世界を知るのは楽しいし、早押しボタンのランプがついたときの、体温が一瞬だけ上がるような感覚がとてもすきだ。この小説を読んでくれる人に、知識で遊ぶ体験を提供できたらと思っている。

 

この小説の主人公の周りにはふたりのクイズ関係者が出てくる。彼らは変人の匂いをぷんぷん漂わせながらも、思わず声をかけてみたくなるような魅力的な人物になっている……はずだ。

外食の練習・完結編

 

hirunelover.hatenablog.com

 

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タイトルの通りである。時田の外食の練習、完結するってよ。

 

さかのぼること数ヶ月前、わたしは友人から遊びに行こうと誘われた。
突然すぎて最初は誰かと間違えているのだと思いこんでいたが、何度確認してもほんとうにわたしを指名しているらしい。マジかよ、とおどろきつつ遊びの予定を立てていく。数回のLINEのやりとりの末、S玉県にある映像ミュージアムに行ったあと、どこかで食事でもしましょうということになった。

友人と遊びに行くイベントなんて経験したことがなかったわたしは、わかりやすく浮かれた。めちゃくちゃ浮かれた。約束の日まで一週間くらいあったのだが、課題にまったく手を付けられない状態だった。

そんな中迎えた当日はニュースで大々的に取り上げられるほどの大嵐だった。せっかくのお出かけなのにおしゃれもできず少々膨れたが、そんなことよりこれから友人と遊ぶのだ、見た目云々などと細かいことを気にしている場合ではない。待ち合わせ場所に現れた友人だって全身黒ずくめだったしきっと問題ない。わたしは自らにそう言い聞かせ、映像ミュージアムに入っていった。

平日なうえに大嵐なので、客はわたしたちふたりしかいなかった。わたしと友人はお互いの大学の話、共通して参加しているサークルの話、リュミエール兄弟の功績について語りながら展示を回った。なにせ貸し切り状態なのでスタッフさんの方が明らかに多く、その辺は若干の気まずさが漂っていたが、館内を回るのは楽しかった。

ふたりとも映像ミュージアムに来るのは初めてで、ミュージアムの規模について誤解していたため、予想よりもだいぶ早く展示を見終わってしまった。ちょっと早いけどお昼食べようぜ、という見解が一致、わたしたちは最寄りのサイゼリヤまで歩いて行った。わたしはトマトソースのパスタを、友人は目玉焼きの乗ったハンバーグを注文し、向かい合って黙りこんだ。

実はこの友人とは同じサークルに所属しているもののほとんど会話をしたことがなく、お互いがどんな人なのかまったくわからないままここまで来ている。おそらくこのとき、ふたりとも「このあと何の話するんだろう……」と思っている。少なくともわたしはそうだった。

いつまでも黙っていては埒があかないので、わたしは大学の話、サークルの話、リュミエール兄弟の功績について話題を振ってみた。先ほどとまったく同じ話にもかかわらず、友人は楽しそうに乗ってくれた。ありがたい。ほっとしたわたしは少しずつ話題を派生させていった。

ふと、バイトの話になった。

「時田さんはどんなバイトしてますか?」と聞かれたので、「初バイトがトイレ清掃だった」という鉄板ネタを披露した。男子トイレも掃除するんですけど、常連のおじさんと仲良くなってめちゃくちゃ話しかけられたんですよ~という話をしたらまあまあウケた。いい感じだ。わたしも「どんなバイトしてます?」と聞き返してみた。すると、友人は「実は……」と神妙な顔をした。

「家族以外の人に初めて言うんですけど」
「はい」
「いま、探偵のバイトに応募しているんですよ」
「探偵……」

わたしは困惑した。予想の斜め上を行く回答だった。

「え、なんで探偵なんですか?」
「密室殺人を解決したいじゃないですか」
「密室殺人を解決したいじゃないですか……!?」
「すきなんですよ、金田一少年とか、名探偵コナンとか」

もうどこからツッコんでいいのかわからない。ボケが高度すぎる。わたしは笑いすぎて酸素不足になった。友人は明らかにむっとして「いや、マジで密室殺人解決したくって……」と言い訳を始めた。それを聞いたわたしはますますおかしくなった。

もっとこの人の話を聞きたいと思ったわたしは、追加でコーヒーゼリーを頼み、結局3時間もサイゼでだらだらした。こんなに喋り倒したのは初めてだった。今まで感じていた外食に対する恥ずかしさもどこかへ吹っ飛んだらしく、ただ食事を楽しんでいた。

帰り道も(暴風でところどころ聞き取れなかったものの)楽しく話しながら歩いた。ふたりして道を勘違いしたので一駅分余計に歩き、足が筋肉痛になったけれど、話が途切れることはなかった。またどこか行きましょうと言って、別々の電車に乗りこんで別れた。

 

電車に揺られながら、なんだか映画のエンドロールみたいだなと思った。

思い当たる終わりはただ一つ、外食の練習である。多くの練習を重ねに重ね、友人と外食に行けるまでになったのだ。わたしは完全に外食を克服した。これで誰と外食に行っても恥ずかしくない!

……しかし、その日から今日まで、緊急事態宣言発出も相まって一度も外食に行っていない。もうすでに外食の感触を忘れつつある。もしかしたら全然完結していない、かもしれない。