気まぐれなあとがき

すべてあなたとわたし宛て

ぺんぎん

こんにちは。ぼくはすみれちゃんに拾われたぺんぎんです。ぺんぎんというのがぼくの名前です。すみれちゃんがつけてくれました。すみれちゃんがいうには、ぼくはペンギンという動物に似ているらしいです。人間もペンギンに似ていると言っていました。飛べないところが似ているらしいです。ほんとうかな? ぼくは本物のペンギンを見たことがないから、わかりません。

すみれちゃんが大学に行っている間に、いつもすみれちゃんが使っているパソコンを拝借してこの文章を書いています。すみれちゃんは最近ずっと「ブログのネタがない」と言っていて、なんだか苦しそうだったので、代わりにぼくが書いてあげます。ぺんぎんはえらいのできっとすみれちゃんは褒めてくれます。

さて、何を書こうかな。

無難にぼくの歴史でも書こうかな。

ぼくは昔ぺんぎんの国にいました。そこはぺんぎんがたくさん住んでいる島でした。本物のペンギンは南極とか寒い場所にいるそうですが、ぺんぎんの国は海辺にヤシの木が生えてるくらい暖かいところです。小さすぎるのと知名度がないせいで地球儀には載っていません。世界地図にも載っていません。詳細な場所を教えると観光客が殺到して島がえらいことになってしまうので教えてはいけないと王様が言っていました。特別にどの辺にあるのか教えてあげると、ナウル共和国の近くにあります。日本から行くとかなり時間がかかるのでおすすめしません。

ぺんぎんの国にはぺんぎんがいっぱいいます。腐るほどいます。たまにニワトリがいて、このニワトリさんはお祭りのときにみんなで美味しくいただきます。王様が雇った飼育員さんもいて、この人たちがぺんぎんの国のお財布を握っています。ぺんぎんの国では食事が3回とおやつが2回あって、すべて飼育員さんが作ってくれます。飼育員さんは昔イタリアンレストランで働いていたらしいです。でもイタリアンが出てきたことはなくて、普段はなめろうが出てきます。たまにsushiが出てきます。すみれちゃんに聞いたんですけど、sushiは日本の料理だそうですね。なめろうも日本の料理だと言っていました。ぺんぎんの国の王様は日本がすきです。なんでも元ガールフレンドが日本から迷い込んできたぺんぎんだったとか。遠泳にも程があるのでたぶん嘘ですね。

なぜぼくがぺんぎんの国からすみれちゃんのおうちに来たのかというと、簡単に言ってしまえば家出です。ぺんぎんの国は競争社会で、飼育員さんから多くのエサをもらうためにたくさんがんばらなくてはいけません。ぺんぎんの国には食いしん坊で意地悪なぺんぎんがたくさんいて、ぼくのエサはそいつらにぜんぶ奪われてしまいました。もうこんな世の中やってられるか! とぼくはブチ切れて、ぺんぎんの国を脱出することに決めたのです。

ぺんぎんの国を出る前に、ガールフレンドのゆきちゃんにさよならを言いに行きました。ゆきちゃんは真っ白なぺんぎんでとてもかわいいです。ゆきちゃんと離れるのはとてもつらいですが、これ以上ぺんぎんの国にいることはできません。ゆきちゃんはぼくの話を聞いてかなしそうな顔をしましたが、「ゆきちゃんも一緒に行こうよ」と誘ってみたら「むりだね!」と断られてしまいました。これが失恋というやつですね。

どうやってぺんぎんの国を脱出したか、どうやって人間の国にやってきたかは、内緒にしておきます。謎は多い方がおもしろい、というのがすみれちゃんの口癖だからです。

とにかくぼくはすみれちゃんに拾われました。すみれちゃんはいい人なので毎日きちんとエサをくれます。たまに豪華なおやつもくれます。ここは天国みたいにいいところです。みんなもすみれちゃんのおうちに来ればいいと思う。すみれちゃんはきっといいこいいこしてくれますよ。

……あ、すみれちゃんが帰ってきた。

すみれちゃんに代わりにブログ書いてあげたよと報告したら、なぜか怒られてしまいました。なんでだろう。ぺんぎんにはむずかしいことはよくわかりません。でもすみれちゃんはこのまま記事にしてあげると言ってくれました。わーい! これでぼくも文豪の仲間入りだ! と言ったらすみれちゃんがあきれていました。

それじゃあぼくはこのへんで失礼します。今日のおやつはミルクレープらしいです。またね。